第66回

Soft Ballet『EARTH BORN』

 テクマ!のスバラシイ音楽に感動しながら、充実した日々をお過ごしの皆様こんにちは。これからしばらくのおセンチ日記は、テクマ!の音楽の素となった、これまたスバラシイ音楽を紹介してゆこうと思います。選択にはとても迷いましたが、人生において聴いた回数が多いアルバムベスト3を紹介することにしました。TM Network『CAROL』Soft Ballet『EARTH BORN』David Bowie『Ziggy Stardust』の3枚がそれです。この中から今回は、最も直接的に現在のテクマ!のサウンド及び活動に影響を与えている、Soft Balletの1st『EARTH BORN』を紹介します。
 これを入手したのは中学2年生のときでした。私は当時『What's In?』を愛読しており、これに載っていた2nd『Document』のセルフライナーノーツに興味を惹かれ、レンタル屋でCDを借りたのです。愛用のSONYドデカホーンから鳴ったそのサウンドは衝撃でした。完璧に機械のサウンドで埋め尽くされたサウンド!当時私は生楽器が嫌いでした。TM Networkが大好きだが、「生の楽器がなくなればもっといいのに」と思っていた私が求めていた世界がそこにはありました。早速TDKのクロムテープにダビングし、聴きまくりました。それから数日後これが2ndであることに気付き1stを探したのですが、行動範囲にあるどのレンタル屋にもありませんでした(当時の財政では、CDを買うことは困難でした)。そんなある日、自転車で40分の距離にある店にあるという情報を入手し、私はその日のうちに往復80分のサイクリングを敢行しました。
 M1『Body to Body』は、声のSE(露骨に言えば喘ぎ声)が11秒続いた後に、16分音符の連打のシンセベースが鳴り響きます。当時の自分には、この16分ベースより素晴らしいものはありませんでした。そしてここでは完全なマシンによる4つ打ちのキックとスネア、左右に振られたハイハット、シンセヴォイスによるパッド、そしてメタルパーカッションが同時に鳴っています。全てがあまりにもカッコ良すぎました。そんなイントロにやられているところに、「懺悔に埋もれ行くしめやかな光の隙間に/満たされぬ心の訪れと距離を砕く言葉に嘆く」という聞いたことも無い言葉の連続による詩が遠藤遼一の低音ヴォーカルによって唄われます。間奏に至れば様々なシンセサウンドが左右に飛び交い、そして再び歌が登場します。ラストの繰り返しではなんと同じ歌に対して違うベースラインが奏でられました。しかもそれはイントロのあの16分ベースライン、そうイントロで提示された主題が再び再現されたのです!
 ロックにおけるメイン楽器はギターであり、ギターのリフやソロが主導権を握り曲を展開させ、それを他の楽器が彩るものであるのだが、これと同じ発想でベースラインに主導権を握らせることにより創り上げられているのがソフトバレエのサウンドである、というのが現在の私の分析です。アルバムはこのコンセプトに完全に乗っ取った上で、様々なバリエーションの曲が続いてゆきます。M2、M3と次第にBPMが上がってゆき、M4『Border Days』はなんとランニングベースが主題となったエレクトリックジャズとなります。BPMの上昇による高揚はここで一区切りがつき、M5、M6、M7はバラード、インダストリアル、ポップソング、と同一のサウンドコンセプトによるバリエーションが続き、M8『Passing Mountain』に至ってはNHKみんなのうた的とも言えるほどのポップソングに進化します。そしてタイトルナンバーのM9『Earth Born』です。重厚なストリングスとヴォイスヒットに彩られたオーケストラルなサウンドの中で、「天は君の上にあるいつからかいつまでか」というスケールの大きな詩が唄われます。エンディングではリズムがフェードアウトしてゆき、ストリングスとヴォイスヒット(これもイントロの主題の再現!)により壮大に終わります。しかしアルバムはここで終わらず、「歩むことは全て後の君の為にある/迷いさえも種になりやがて君の胸に咲く」という詩がM10『Black Ice』の激しいリズムと共に唄われ終わるのです。
 最小限のエレクトリックな素材を創り上げ、過去の音楽遺産全てを駆使してそれらを組み上げ、安易な慰めではないが大きな視点を与える言葉を選りすぐり、肉体を駆使したライヴパフォーマンスで表現する。これが私がソフトバレエから学んだ全てであり、テクマ!として行っている活動の基礎となっています。テクマ!に興味のある方にはぜひ聴いてもらいたいアルバム、それがSoft Ballet『EARTH BORN』です。でわまた、今度は、モア・ベターよ。人身ばいばーい!

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