理想的なキックとはなにか。私は極真空手の達人ではなくテクノ歌手であるので、ここで言うキック、とはバスドラムの音のことである。かつてこの言葉は主にエンジニアが使用していたのだが、響きがカッコ良かったせいか主に打ち込み系のミュージシャンの間で広く使われるようになってきた。サウンドアンドレコーディングマガジンがかっこいい雑誌と認知されてきたのと、同じ歴史を歩んでいるとも言える。ちなみに昔気質なバンドマンは、かたくなにバスドラと呼んでいたりもいる。もっと古い人とかジャズの人とかになるとバスタム、と呼ぶ人もいる。あれはタムとかフロアタムの仲間でもあるのだな。
閑話休題。話を明確にするために、今回言うところのキック、というのは打ち込みで鳴らされるキックに限定しておく。中村達也とかリキ・ヤーベツァイトとかのキックのカッコ良さは言うに及ばないのだが、今回はそういうのは無視しておいて、「ベロシティ127で4分音符を打ってカッコ良いキック」に限定する。強弱無しで、無慈悲に鳴らし続けることこそがカッコ良いキック、のおはなしだ。
さて、そうなるとここ何年かで最強のキックだったのはDaftpunkの『ディスカバリー』だったと思う、クラブユース専用でない音楽の中では。だってタワーの試聴機についてるヘッドホンがごぼごぼいってたもの。いつも思うのだけれど、あの試聴機ってなんで重低音回路が最強にセットしてあるような音なんだろう?良くないって、あの音は。せめてテクノが置いてあるコーナーのやつだけは素の音にするか、どんな低音でも再生する強力なヘッドホンを用意するかしてほしいね。Duftpankに話を戻すと、あれはとんでもなくコンプレッサーをかけまくったキックだ。サンプリングするとき、レコーダーに流し込むとき、ミックスのとき、マスタリングのとき、全部の場でコンプかけたんだろうなー、って音だ。最初はすげー、と思ったけど、やっぱりここまで音圧を上げられすぎると辛いものがある。要するに、あまり好きではない。
中村達也とリキ・ヤーベツァイトを排除してクラブユースを排除して、Daftpunkも排除して、要するに今私が好きで自分で出したいと思っているキックとは何か?を今回は考えたいわけなんだね。決して普遍的な誰にとってもの理想的なキックを研究する場ではないのだ。やはりモノを書くというのはいい頭の整理になる。皆さんにもぜひなんでもかんでも書いてみることをお薦めする。学校に行って授業を受けて単位を取ることと、自分の天才的な才能を発揮して作曲活動に励むこととどちらが大事なのか?などということもノートに整理していったりすると、異常に空しい結論が出たりして楽しい。
さぁさぁさぁ、本題。私が今好きなキック、それはAlesisのリズムマシン、SR-16のキックに自分でエディットしまっくったBoss SE-70のコンプレッサーをかけた音だ。SR-16はこれこそ90年代初期!という音がする素晴らしいマシンなのだが、やはりちょーっと音圧が足りないところがある。それもそうなのだ、90年代初期までは無闇矢鱈についたパラアウトからパーツを別々に出し、それぞれをミキサーで加工することができる金持ちにしかクオリティの高いキックは出せなかったのだから。それを想定して創られているのがこのころのマシンなのだから。だがしかし今ここらへんの機械はみんなやたらと安いから、金持ちじゃなくてもコンプレッサーかけたりできる。しかもソフトシンセじゃないから、音にガッツがある。絶対にある。機材を売り払ってパソコンだけで音楽を作ろうとしている人たちは、絶対に後悔することになることを、私は予言しておこう。今持ってる気に入った機材は絶対に手放さない方がいいって。あと、プリセットのままで使うのも絶対にやめておくように。
うん、すっきりした。でわまた、今回はこのへんで。今度は、モア・ベターよ、人身ばいばーい!

