第90回

パタリロ!10巻について

 紳士淑女の皆様こんにちは、テクマ!です。今回のおセンチ日記は、テクマ!の人格形成に最も大きな影響を与えている書物、『パタリロ!』についてお話をさせていただきます。パタリロについては書きたいことがとても沢山あるので、今回は、最も良い話が詰まっているコミックスでの第10巻について話させていただきます。尚、『パタリロ!』読者を増やそう!という意図上、背景と主要キャラについての解説はしません。
 まずは『プラズマの恋』です。パタリロが作ったプラズマXというロボットがアフロ18というロボットに失恋した後に、偶然発見した卵から孵った恐竜を育てていたところ、その恐竜ばかりにかまうプラズマXに嫉妬したアフロ18が恐竜の小屋を壊してしまい、結果暴れ出した恐竜に襲われたアフロ18と近所の子供たちを救うためにプラズマXは恐竜を殺します。そこで自分の度量の小ささと罪の大きさを反省したアフロ18が恐竜の卵を探すために旅に出、置き手紙を見つけたプラズマXがわたわたと後を追う、というお話です。次は『走れパタリロ』。ある大企業の社長の息子の手術のために、同じ「RH+-ヌルα型」という血液型であるパタリロが病院へ向かう途中でKGBの外人部隊に襲われます。しかしその外人部隊のひとりは10年前に社長の家を家出した人物、つまり病人の兄なのです。彼は飼っている小鳥の機転によりそのことに気付き、仲間と刺し違え、弟の命を救います。そして『マライヒの赤ちゃん』。マライヒ(♂)が妊娠してしまい、それを聞き付けたバンコラン(♂)の昔の愛人であるミスラン(♂)が病院に忍び込み「子供ができたらそれだけバンコランが危険な任務をしにくくなる」とマライヒを追い詰めた後に暴れだし、結局マライヒを流産させてしまうという話です。ラストシーンで聞こえる教会の鐘の音が、ゲイの結婚問題を示唆しているようで小憎いです。
 ここまでも素晴らしい話ばかりですが、更なる名作2作が続きます。『忠誠の木』。パリの公園でパタリロは、フランス革命の頃に刻まれたと思われる、もはや読み取ることができない文章が刻まれた「忠誠の木」という木を見つけます。そしてフランス革命についての小説書こうと思い立ち、フランスの歴史に詳しいタマネギ16号を連れてタイムワープで革命当時のフランスへ赴き、ジェンヌという娘と知り合います。そこで革命に巻き込まれ現代兵器でもってなんとか危機を乗り越えるのですが、ここで16号は、これからの激動の時代からジェンヌを守るためにこの時代に残らせて下さい、とパタリロに訴えます。ひねくれてはいますが「人にはそれぞれ違った幸せの道がある」ことは知っているパタリロは、後悔しないことだけを確認してこれを承諾し、現代へ帰ります。そして残った16号はパリの公園にある木に「パタリロ=ド=マリネール8世殿下へ/永遠の忠誠をこめて/タマネギ16号」と刻みます。
 『FLY ME TO THE MOON』。宇宙に憧れ航空宇宙局に勤めるロビーという少年は、手をかざすだけで人のケガや病気を治せるという特技を持っています。これを知ったパタリロは、月へ行くロケットに乗せてやるという条件でロビーに世界中の病人の治療をさせます。続けているうちにロビーはなぜか弱ってくるのですが、ここにバンコランが東南アジアの戦争を終わらせるための活動の終わり際で脳溢血で倒れたアントニウス枢機卿の治療の依頼を持ってきます。枢機卿のいるロンドンへ着いたところで、ロビーの能力を調べていた医者が、ロビーの能力とは自分の生命エネルギーを他人に与えることにすぎないのでこのままでは死んでしまう、とパタリロたちに連絡してきます。ロビーを連れて帰国しようと準備しているところへ、枢機卿が危篤状態になったという連絡があり、パタリロとバンコランは口論し、そしてパタリロはロビーのところへ行って、この治療の後でロケットに乗せてやるから全精力で治療してくれ、と告げます。枢機卿は助かり戦争は終わり何千何万の人名は救われますが、ロビーは死にます。「その日パタリロは生まれてはじめて/心の底から泣きました。」というダイアローグの下で小さくうずくまるパタリロがいます。「夢があるんです/宇宙飛行士になる勉強をしていつか宇宙に飛び出してみたいんです/アポロ11号のアームストロング船長みたいに月へ…」
 リアルな心情や身近な話についての表現が盛んになる一方で、きちんと構築された「お話」を創り上げることが、近年あまり重視されていないように私は思います。しかし、「構築」というのはエモーショナルな表現をするための大事な要素である、と私は『パタリロ!』を読むたびに思います。何かを表現したい人には、特に強く『パタリロ!』お薦めします。でわまた、今度は、モア・ベターよ。人身ばいばーい!

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